お茶漬けが10万円?!江戸の高級料亭が、大繁盛した理由。寄り道・歴史こぼれ話
中小飲食店の「採用 定着 育成」の専門家。日本フードリーダース協会代表理事の小山心兵です。
前回に続いて、寄り道です。
はじまりはご馳走ではなかった外食も、江戸の中ごろには、本格的な料理屋が開業するようになります。
そして、高級な店も、現れました。
江戸の後期に栄えた、「八百善」という店があります。
その店には、こんな話が残っています。
お客様が、「お茶漬けと香の物」を頼みました。
ところが、出てくるまで、半日ほど待たされます。
そして、お代は、一両二分。
一両二分は、いまのお金にすると、10万円をこえる額と考えられています。
高い理由は、遠くの川まで水を汲みに行った費用だから、と伝えられています。
本当にそうだったのかは、いまとなっては分かりません。
でも、こんな話が語り継がれるほど、八百善は、江戸で知られた店でした。
お茶漬けです。
待たされて、しかも高い。
いまなら、完全にクレームです。
ところが、この店は、年に二千両ほどの商いがあったと伝えられています。
大繁盛です。
選ばれたのは、値段を上まわる理由があったからでしょう。
なぜ、人は集まったのか。
ヒントのひとつが、本です。
八百善の主人は、料理の本を出版しました。
序文は、当時の有名な文人。挿絵は、一流の絵師。
料理書の枠をこえた豪華なつくりで、江戸土産としても人気だったと、国立国会図書館の展示資料で紹介されています。
お店の外で、お店の物語が語られる。
まだ食べていない人が、「いつか行ってみたい」と思う。
食べた人は、人に話したくなる。
江戸の高級料亭が売っていたのは、お茶漬けそのものではなかったのではないでしょうか。
「あの店で食べた」という、特別な体験です。
お客様は、料理だけでなく、「あの店に行った」という話を持ち帰ったのかもしれません。
外食の原点は、ご馳走です。
特別な日の、特別な一食。
その気持ちは、江戸も、いまも、変わりません。
値段が高くても、お客様が足を運ぶ店には、「語りたくなる理由」があります。
安さで選ばれる道もあります。
でも、小さなお店には、もうひとつの道があります。
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さて、江戸には、立ったまま、さっと食べる店もありました。
高級料亭とは、正反対の「早い外食」です。
次回も、寄り道です。
参考:日本銀行 貨幣博物館「江戸時代の1両は今のいくら?」/国立国会図書館 第145回常設展示「外食」の歴史
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